昭和の未解決事件簿 メロンパン事件

はね男

その事件が起こったのは東京ドームが完成し、ドラゴンクエストⅢが発売された頃

時代はまだ、平成が始まる前の昭和である

小学校1年生であった私は、母親の叫び声で目が覚めた

「メ、メロンパンが一つ足りへんやないのー」

台所まで走っていた私の寝ぼけ眼には

顔面蒼白で立ち尽くす母親の姿がうつった

「確かに人数分買ってたんやで。私は…」

うわ言のように繰り返す母親

我が家の家族構成は父親、母親、姉、兄、私の5人家族

子供達はまだまだ育ちだかり

その中でメロンパンが一つ足りないということは大ごとである

「誰か食べた?」

母の問いかけに、家族全員が首を横に振る

ということは外部から侵入者が??

一同に緊張感が走る

そんな時、私の隣にいた兄が口を開く

「みんなの机を調べればいいんやない?」

ここで兄(小3)が言う、みんなの机は子供達3人の机の中である

彼の中では容疑者が絞られているみたいであった

全く見に覚えはない潔白の私は、兄の提案を否定も肯定もせず

事の成り行きを見届けていた

(ちなみに私と兄の部屋を同部屋であった)

兄が名探偵よろしく、おもむろに私の机に近づいて

上から2段目の引き出しを開けた

「あーーこんなところに〜」

兄は引き出しの中から、半分ぐらい食べられたメロンパンを取り出して

まるで、聖水のように天高くメロンパンを掲げたのである

「?????」

全く見に覚えのない私は、すぐにリアクションを取ることができなかった

チラリと私の方を見る兄の口元からわずかに笑みが溢れていたようにも見えた

まだ小さかった私は、パニックになり、大きな声で泣き叫びながら

「食べてない。食べてない」と繰り返すことがやっとであった

あまりの私の泣きっぷりに、何かを感じた母親は

「本当に食べてないんか?」と私に確認

エグ、エグしながら頷く私

「何か知ってるんか?」と兄に確認する母親

首を横に振る兄

「よーし。じゃぁ、食べた、食べてないを書いて、お母さんに渡しなさい」

と言ってメモ用紙を私と兄に渡す母

完全に姉は容疑者から外れたみたいである

「そんで、そのメモをお母さんだけが見て、この話は終わり。メモは便所に捨てます」

当時の我が家は汲み取り式のボットン便所

メモをトイレに捨てると完全にブラックスボックス化となる

もちろん私は大きく

「食べてません」

と書いて母にメモを渡す

だって食べてないんだもの

2枚のメモを持ってトイレに入った母は

メモの中身を確認してすぐにトイレから出てきた

「はーい。コレでこの話は終わり。ご飯食べよう」

そう言て、各々を台所に行くように促した

なっとくできる訳がない私は

「どうなん?なぁどうなん?」

と母親に食い下がるも

「終わりと言ったら終わりや!!」

とこれ以上言ったら只事では済まないよ!!

の母親の覇気に気圧され黙って朝ごはんを食べるしかなった

(因みに食べかけのメロンパンは父が食べてくれて、子供達は新しいメロンパンを食べた)

だけど私は決して忘れない

兄のあの時の不敵な笑みを。。

兄の棒読みの「あーーこんなところに〜」を。。

大人になって帰省した時なんかに

折りを見てこの話を母にして真相を確かめようとするが

「そんなことあったかしら??」

と女政治家のような顔になり、まともに取り合ってもらえない

本当に忘れてしまったのか…

はたまたとぼけているだけなのか…

真相は謎のままである。。

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